· FabLab Westharima Team · レーザー加工機 · 18 min read
xTool P2S 55W レビュー|使い方とエラーから学んだポイント
約8年間使っていた古いレーザー加工機から卒業し、新しくxTool P2S 55Wを導入。基本的な使い方から、失敗を通してわかったポイント、実際に使って感じた良い点・気になった点まで率直にレビューします。
xTool P2S 55W レビュー|使い方とエラーから学んだポイント
約8年間使っていた古いレーザー加工機から卒業し、新しくxTool P2S 55Wを導入しました。 この記事では、基本的な使い方から、失敗を通してわかったポイント、実際に使って感じた良い点・気になった点まで、率直な感想をまとめています。
購入したものリスト
🔹自動コンベアフィーダー(材料の自動加工)
SafetyPro AP2 (Super Cycloneシステム搭載空気清浄機)
(🔹を公式サイトでセットで購入。その他の2点は後で購入)

仕様
以下公式サイトより P2Sの仕様 抜粋
| マシンスペック | 詳細 |
|---|---|
| 処理モード | レーザー切断、レーザー彫刻 |
| 対応素材 | レーザー切断可能: 木材、アクリル、布、革 レーザー彫刻可能: 金属、ガラス、竹、セラミック |
| 作業エリア | 600 mm × 305 mm |
| 最大作業速度 | 23.6 インチ/秒(600 mm/s)、X軸加速度 6400 mm/s² |
| 最大レーザー切断能力(バスウッド) | 18 mm |
| 最大レーザー切断能力(アクリル) | 20 mm |
| 最大加工高さ | ライザーベースあり: 215 mm トレイあり: 64 mm トレイなし: 71 mm |
| 最大回転彫刻直径 | ライザーベースあり: 0 - 180 mm ライザーベースなし: 3 - 50 mm |
ソフトウェア
- 対応ソフトウェア:xTool Creative Space / Lightburn
- オペレーティングシステム:Android / iOS / iPad / Windows / macOS
- 接続方法:USB / Wi-Fi
- 対応ファイル:SVG / DXF / JPG / JPEG / PNG / BMP / TIF
簡単操作
- 事前組立:はい
- 内蔵カメラ:16MP 近距離カメラ + 16MP パノラマカメラ
- 位置決め方法:デュアルカメラ位置決め
- 焦点モード:オートフォーカス
- 測距システム:LiDAR 測距システム
- プレビュー方法:スマートカメラプレビュー
精度 & 正確性
- レーザースポットサイズ:0.15mm × 0.2mm
- 位置決め精度:0.3mm(カメラ)
- 測距精度:0.3mm(カメラ)
- 画像解像度:1000 DPI
- 動作精度:0.015mm
一般情報
- 安全認証:クラス4レーザー安全
- 製品寸法:1000mm × 639mm × 268mm
- 製品重量:45kg
- 最大機械入力電力:700W
- 電源アダプター入力電圧:100V~120V, AC 50/60Hz
初期設定と準備
付属のマシン使用説明とクィックスタートガイドを参考に開梱・作動確認・損傷有無チェック・冷却剤の充填・電源接続・排煙パイプの取り付け等を行いました。
xTool Studio のインストール
P2S を操作するには、xTool Studio(旧名:xTool Creative Space) というデザインソフトウェアを使用しました。
Windows での インストール
- xTool 公式サイトにアクセスします
- xTool Studio のSoftwareダウンロードページから Windows 版をダウンロードします
- ダウンロードファイルを実行し、インストールウィザードに従います
- インストール完了後、xTool Studio を起動します

Mac でのインストール
xTool 公式サイトのSoftwareページから Mac 版をダウンロードします
ダウンロードした .dmg ファイルをダブルクリックして開きます
xTool Studio アプリを Applications フォルダにドラッグ&ドロップします
Applications フォルダから xTool Studio を起動します
⚠️Mac では初回起動時に「未確認の開発元」というセキュリティ警告が出る場合があります。その場合は、システム環境設定のセキュリティとプライバシーで「このまま開く」を選択してください。
デバイスの接続(Wi-Fi)
Wi-Fi での接続手順
- P2S 本体を電源ON
- xTool Studio アプリにてP2Sをデバイス追加
- xTool Studio 側でWifi接続設定を行いました(同じ Wi-Fi ネットワーク内で接続)
Wi-Fi 接続が不安定な場合の対策: 以下の対策により今回はWifi接続されました。
- P2S / パソコン / Wifiルーターをなるべく近くの距離で操作
- P2S・PCの再起動(電源を一度切り、30秒ほど待ってから再度起動)
もしそれでも解決しない場合、USB 接続がお勧めかもしれません。
使用前の重要な注意
レーザー加工機は非常に便利なツールですが、使い方を誤ると火災や健康被害につながる危険があります。 実際に操作を始める前に、必ず安全対策を理解してください。
詳しくは以下の記事で解説しています:
→ レーザー加工機の安全な使い方|火災・事故を防ぐための基本ルール
この記事では以下の重要事項を解説しています:
- 加工中に絶対に守るべきルール
- 加工禁止素材と危険性
- 加工後の安全対策
- 緊急時の対応方法
xTool Studio の基本操作とテスト
インターフェースの理解
xTool Studio を起動するとメイン画面が表示されます。スムーズな操作の第一歩として、画面構成を理解しました。

- 赤枠:デザインツールバー:画像インポート、図形描画、テキスト入力、パス編集などのツールが配置。
- 青枠:キャンバス: 実際にデザインを作成・編集する場所。
- ここでは P2S の加工床サイズが表示され、どこに何を加工するかを視覚的に確認できます。
- 緑枠:デバイス設定: デバイス選択、処理モードの変更。
- オレンジ枠:素材設定: 素材を選択、カメラでの位置確認、照準を合わせた測定ができます。
- ピンク枠: オブジェクトの加工設定選択したオブジェクトの加工設定、加工パラメータの設定ができます。
デザインの作成と配置
シナベニヤ 3mm にテキストを彫刻・切断する場合を例に説明します。
新しいプロジェクトを作成: ソフトを起動すると表示される「新規プロジェクト」をクリック。 
デバイスを選択: (例)今回はWifiを使用してP2Sと接続 
処理モードを選択: (注意)処理モードと同じ機材を設置済にしてから、処理モードを選択します。 
素材を選択: 材料を選択し、適用をクリックします。(今回はシナベニヤ3mm厚に近い素材を選択) 
素材の固定 シナベニヤを加工床に置き、ズレないようにしっかり固定します。治具やテープで固定してください。固定が甘いと、加工中にズレてしまい、意図しない箇所が加工されます。
背景を更新/照準を合わせた測定
- 背景の更新をクリック
- 照準を合わせた測定をクリックし、材料の上でクリックします。

テキストの彫刻と切断:
- テキストをクリックし、キャンバス上をクリックするとテキスト入力ボックスが表示されます。文字を入力し、上部に表示されるプロパティで フォント、サイズ、太さなどを調整できます。
- 追加したテキストをクリックし、彫刻・切断どちらにするか選択します。
| モード | 説明 |
|---|---|
| 彫刻加工 | 表面を浅く彫る |
| 切断加工 | 指定した線に沿ってレーザーが貫通する |
(例) 彫刻 / 切断 を加工設定する場合
彫刻を設定(今回は適用パラメータの値を使用)
切断を設定(今回は適用パラメータの値を使用) 
パラメータ設定の基礎
加工条件として、最も重要な項目は「パワー」「スピード」「回数」です。
| 項目 | 説明 |
|---|---|
| パワー(Power) | レーザーの出力強度を指定。 値が高いほど強力で、 厚みのある素材の切断時などは高出力が有効です。 |
| スピード(Speed) | レーザーヘッドの移動速度を指定。 速くすると →加工時間は短縮、浅く加工。 遅くすると →加工時間は長くなり、深く加工。 |
| 回数 | レーザ加工の回数を指定 加工材料に悪影響(溶けや焦げ)が出てしまう場合、小さいエネルギーで繰り返し加工することで加工結果の改善が期待できます。 |
- ※最適値は素材や用途により異なるため、公式サイトの参考値を元に、実験しながら調整してください。
- ※パワー100%はレーザーの傷みが大きいようなので、私は使用を控えています。
加工開始
プロセスを押す: すべての設定が完了したら、「プロセス」ボタンをクリックします。 
加工開始前の確認: 加工前の最終チェックをし、「Start」ボタンをクリックします。 
- 素材が加工床にしっかり固定されているか
- 加工範囲に障害物がないか
加工データの転送: Start ボタンを押したら、P2S本体に、加工データが送られます。
加工の実行
- xTool P2S本体の上部にあるStartボタンを押して処理を開始します。
- 機械の前を離れず、常に監視してください。
- 異常な音や煙が出ていないか確認します。
加工完了後
- 加工が完了するとビープ音が鳴ります。
- すぐに素材を取り出さず、煙が完全に消え、かつ最低1~2分経過するまで待ってください。素材は熱を持っているため、やけどに注意してください。
テスト結果
画像

材料:シナベニヤ 厚さ3mm
利用したパラメータ:(3mm)Pine Ponderosa Plywood(松合板)のデフォルト
| モード | パワー | 速度 | 加工回数 | 彫刻密度 | 彫刻モード |
|---|---|---|---|---|---|
| 彫刻 | 15% | 400mm/s | 1 | 100 | 双方向 |
| 切断 | 60% | 15mm/s | 1 | - | - |
感想:
切断:完全に切断できた。少しパワーを下げても良い気がする。
彫刻:薄い彫刻でした。利用したパラメータはあくまで類似品なので、その影響もあると思われます。
- 原因:シナベニヤの表面が硬かった可能性。
- 次回の改善案:
- i. パワーを15%→20%に上げる
- ii. または加工回数を1回→2回に増やす
- iii. 彫刻密度を調整 100→300(Max)に上げる
- 実際に試した結果:[ここに結果を追記予定]
エラーと学び
発生したエラーと学んだポイントを紹介します。
- 発生したエラー:「ハニカムパネルを正しく設置しているか確認」と表示され、加工が開始できませんでした。
- 原因:P2S本体の一番下の段に取り付けるべき下受けを、誤ってライザーベースの一番上に設置してしまったため。
- 考察:本体側が下受け棚の設置を検知できず、エラーとなった模様。
- 対策:下受けを正しくP2S本体の一番下の段に取り付け直したことで、正常に加工できるようになりました。 ※ライザーベース使用後にハニカムパネルへ戻す際は、下受けの設置場所にくれぐれも注意してください。

使用レビュー:良かった点と気になった点
P2Sを実際に使ってみて感じた、率直な評価をまとめました。
| 項目 | ポイント・感想 |
|---|---|
| ソフトウェア (xTool Studio / 旧名:xTool Creative Space) | - 直感的で使いやすいインターフェース - 素材パラメータは若干強めの印象 - 英語表記のため素材検索にやや手間がかかる |
| ワークエリア (加工範囲) | - 横幅は十分、縦300mmはやや狭く感じる - もっと大きなサイズに対応できると用途が広がるのになぁという印象 - コンベアフィーダー対応は大きなメリットだが、設置スペースが必要 - 上位P3は縦幅が広いが価格が高い |
| Wi-Fi接続 | - 接続が不安定になることがある(Wi-Fi環境の品質による) |
| 設置 | - 本体が45kgと重く、複数人で設置推奨 |
| カメラ機能 | - 平面で凹凸の少ない材料では快適に利用可 - 細かな位置調整時は工夫が必要 - ロータリー設定時は位置把握が難しい |
| 加工性能 | - 透明アクリル:きれいにカット可能 - 木材:良好だが焦げ具合の調整が必要 |
総合評価と導入検討のポイント
P2S 55Wは強力で汎用性の高いレーザー加工機ですが、導入には以下の環境が整っていることが望ましいです。
- 予算:本体に加え、周辺機器(空気清浄機など)への投資が必要
- 作業スペース:最低でも前面に1.5m × 1mの作業スペースが必要
- ライザーベース使用時はさらに広いスペースが必要
- P2S+ライザーベースを載せる台を作る場合は、固定付キャスターの採用を推奨
- 換気環境:SafetyPro AP2で空気清浄できるが、換気扇との併用が必須
- 用途:レーザー加工を本格的に楽しみたい方向け
トラブルシューティング
デバイスが接続できない場合
USB 接続の場合
- USB ケーブルがしっかり接続されているか確認
- xTool Studio を再起動
- パソコンを再起動
Wi-Fi 接続の場合 前述の「Wi-Fi 接続が不安定な場合の対策」を参照してください。それでも解決しない場合は、USB 接続に切り替えることを推奨します。
加工が不均一な場合
- 加工床が傾いていないか確認
- レンズやミラーが汚れていないか確認(汚れている場合はクリーニング)
- 素材がしっかり固定されているか確認
予期しない加工結果
- 設定したパラメータが正しく保存されているか確認
レーザー加工に使える素材・消耗品
おすすめ加工素材
- シナベニヤ 厚さ3mm
- アクリル板 3mm厚(透明)
- レザークラフトパーツ + レザークラフトキット 工具 道具 39点セット
- 無地木制キーホルダー(丸形)
- 無地木制キーホルダー(長方形)
- 無地木制キーホルダー(ドロップ形)
素材固定用品
ヤニ防止・透明アクリルの加工時の照準を合わせた測定に使用
まとめ
xTool P2S 55W は非常に強力で汎用性の高いツールです。基本的な操作を理解し、安全ルール を守ることで、多くの素晴らしい作品を作ることができます。
特に重要なポイント:
- 安全対策を必ず確認 - 火災・事故を防ぐための基本ルール
- Wi-Fi 接続が不安定な場合は USB 接続を使用
- 素材パラメータは実験しながら調整 - 公式の設定は強めの印象
これらを守ることで、安全で効率的なレーザー加工ができます。最初は簡単なシナベニヤの加工から始めて、経験を積み重ねたいと思います。



