· FabLab Westharima Team · DIY  · 23 min read

【2025年版】電子工作のはんだ付け完全ガイド | 初心者でも失敗しない基本とコツ

電子工作に必須のはんだ付け技術を基礎から解説。必要な道具、正しい手順、失敗しないコツまで、初心者が確実にマスターできる完全ガイドです。

目次

電子工作を始めるなら、避けて通れないのがはんだ付け。一見難しそうに見えますが、正しい手順とコツを押さえれば、初心者でも確実にマスターできる技術です。

この記事では、はんだ付けの基本から実践的なテクニック、よくある失敗例とその対策まで、私自身の経験を交えながら詳しく解説します。

はんだ付けとは?

はんだ付けとは、金属製のはんだを熱で溶かし、電子部品と基板を電気的に接続する技術です。

はんだ付けの目的

  • 電気的接続:部品同士を電気的につなぐことが第一の目的
  • 物理的固定:副次的に部品を基板に固定する効果もある
  • 信頼性の確保:正しくはんだ付けされていれば、安定した電気信号が流れる

はんだ付けは、接合部分に強度を持たせるためではなく、電気的に接続させることを目的としています。そのため、見た目だけでなく、電気が正しく流れる状態を作ることが重要です。

必要な材料と道具

  • 道具の扱いやすさを重視して、ご自身でも色々検討されてからの購入をお勧めします。
  • 筆者が実際に使いやすいと感じた道具例も交えて紹介します。

基本セット(これだけは揃えよう)

道具説明おすすめ製品(初心者向け)
はんだごてはんだを溶かす工具。温度調節機能付き(30W以上)が必須goot 温度調節はんだこて PX-280
初心者に最適な温度調節機能付き。200〜500℃まで調整可能。
筆者は、今までずっと白光押しでしたが、本品を使用してみたところ、温度がステーション並みに早く上がり、使いやすいと感じた。快適すぎて、今のところ何の不満もありません。
こて台はんだごてを安全に置く台。火傷・火事防止に必須goot こて台 ST27
こて先クリーナー2種類付きで便利
はんだ糸はんだが一般的。鉛フリーはんだが主流。直径0.6が初心者向き。白光 鉛フリーはんだ 0.6mm
フラックスはんだの流れを良くする薬剤。成功率が格段にアップ白光(HAKKO) 鉛フリーはんだ対応電子部品用フラックス FS200-01
ペーストタイプで塗りやすい。
はんだ吸取線失敗したはんだを除去する。幅2〜3mmが使いやすい白光(HAKKO) はんだ吸取線 FR551-2515-J
フラックス入りで使いやすい
ニッパー余分な部品の足を切る。精密作業用の薄刃が便利WORKPRO 薄刃ニッパー
電子工作に最適な切れ味

あると便利な追加ツール

道具説明おすすめ製品
ピンセット小型部品の保持や位置調整に必須(goot) 精密ピンセット わし口タイプ TS-15
先端が精密で滑りにくい
テスターはんだ付け後の導通チェックに使用AstroAI DM6000AR
初心者向けで導通ブザー付き
ワイヤーストリッパー配線の被覆を剥く工具ベッセル(VESSEL) ワイヤーストリッパー 3500E-3
AWG 12/ 14/ 16/ 18/ 20/ 22/ 24
マスキングテープ部品を仮固定するスリーエム(3M) 黄色 15mm×18m M40J-15

鉛フリーはんだ vs 鉛入りはんだの違い

はんだには 鉛フリー(無鉛)鉛入り(共晶はんだ) の2種類があります。現在は環境規制により、鉛フリーはんだが主流になっていますが、それぞれの特徴を理解しておくことが重要です。

比較表

項目鉛フリーはんだ鉛入りはんだ(共晶はんだ)
主な成分スズ(Sn)、銅(Cu)、銀(Ag)などスズ(Sn)63% + 鉛(Pb)37%
融点約217〜227℃(高い)約183℃(低い)
作業温度350〜380℃320〜350℃
仕上がりやや曇った銀色。光沢は控えめピカピカの銀色。光沢が強い
流動性やや硬く、流れにくい柔らかく、スムーズに流れる
作業難易度やや難しい(高温・長時間加熱が必要)初心者でも扱いやすい
安全性無害(環境・人体に優しい)鉛は有害物質。取り扱い注意
臭いフラックスの臭いがやや強い比較的臭いが少ない
価格やや高め安価
用途商用製品・一般的な電子工作趣味・個人使用(規制対象外)

どちらを選ぶべきか?

対象者おすすめ理由
初心者鉛フリーはんだ現在の主流であり、安全性が高い。やや難しいが、最初から慣れておくべき
経験者(趣味用途)どちらでも可作業性を重視するなら鉛入り、安全性重視なら鉛フリー
商用・業務用鉛フリーはんだRoHS指令など環境規制により、鉛フリーが必須

初心者が鉛フリーはんだを使う際のコツ

コツ詳細
温度を高めに設定する350〜380℃に設定。低いとはんだが溶けにくい
加熱時間をやや長めにする鉛入りより1〜2秒長めに加熱する(4〜5秒程度)
フラックスを積極的に使う鉛フリーは流動性が低いため、フラックスで補う
こて先の温度管理を徹底する温度調節機能付きはんだごてを使う
換気を十分に行うフラックスの煙が多いため、換気は必須

注意:鉛入りはんだを使用する場合は、作業後に必ず手を洗い、飲食物の近くで作業しないこと。鉛は人体に有害です。

良いはんだ付けの見分け方

はんだ付けの出来栄えは、見た目で判断できます。

良いはんだ付けの3つの特徴

特徴説明
富士山型の形状- はんだが「富士山」のようになだらかな形をしている
- 頂点がとがらず、滑らかに広がっている
表面がなめらか- 光沢があり、ツヤツヤしている
- 気泡やひび割れがない
ランドとリード線の両方にしっかり付着- 基板のランド(基板上の銅色の円形接続部分)全体にはんだが広がっている
- 部品の足(リード線:部品から出ている金属の線)にもしっかり濡れている

悪いはんだ付けの特徴

これらの失敗は、電気的な接触不良やショートの原因となるため、見つけたら必ず修正しましょう。

失敗例見た目原因
イモはんだはんだが球状になって、ランドやリード線に馴染んでいない加熱不足
目玉はんだランドだけにはんだが付き、リード線が浮いているリード線の加熱不足
ブリッジ複数のランドがはんだでつながってしまうはんだの量が多すぎる
ヤニ残り・ヤニ汚れはんだが表面だけに付着している温度不足、またはフラックスの残留
ツノ立ちはんだの先端がトゲのように尖っているはんだごてをゆっくり離しすぎ

はんだ付けの基本手順

ここでは、初心者でも失敗しにくい手順で解説します。

STEP 1:はんだごてを予熱する

はんだごては使用前に2〜3分間予熱しておきましょう。

  • 温度調節機能付きの場合:320〜350℃ に設定
  • こて先が銀色に輝いている状態が適温のサイン
  • 黒く変色している場合は、クリーナーで掃除する

ポイント:エアコンや扇風機の風が直接当たる場所では作業しないこと。温度が下がりやすくなります。

STEP 2:基板と部品を固定する

基板に部品を配置し、マスキングテープで仮固定します。

  • 部品が動かないようにしっかり固定
  • 部品の足(リード線)は基板の裏側に少し出す程度でOK
  • 後で切るので、長すぎる必要はない

注記:本来は事前にリード線を適切な長さに切るのが正しいやり方ですが、DIYの場合は固定のしやすさを優先し、後から切る方法でも問題ありません。

STEP 3:こて先をきれいにする

はんだ付けの直前に、こて先をクリーナーできれいにします。

  • スポンジタイプ:軽く湿らせたスポンジでこて先を拭く
  • ワイヤータイプ:ワイヤーに差し込んで汚れを落とす

重要:こて先が黒く酸化していると、はんだが弾かれて失敗しやすくなります。

STEP 4:フラックスを塗る(必要に応じて)

はんだの流れが悪い場合や、確実に成功させたい場合は、フラックスをランドとリード線に少量塗ります。

  • フラックスは蒸発しやすいので、塗布後は素早く作業する
  • 初心者のうちは、毎回塗っておくと失敗が減る
  • ヤニを含むため、使用後は必ずしっかりと蓋を閉めましょう。

STEP 5:ランドとリード線を温める

これが最も重要なステップです。

  1. こて先を寝かせる

    • こて先の側面(銀色の部分)をランドに広く接触させる
    • 垂直に立てるのではなく、30〜45度くらいに傾ける
  2. ランドとリード線の両方を同時に温める

    • こて先でランドとリード線の接点を挟むようにして温める
    • 加熱時間は3〜4秒が目安

コツ:こて先を寝かせることで、接触面積が増えて効率よく熱が伝わります。これが上手なはんだ付けの最大のポイントです。

STEP 6:はんだを溶かして流し込む

ランドとリード線が十分に温まったら、はんだを投入します。

  1. はんだを軽く押し当てる

    • はんだをこて先に当てるのではなく、ランドとリード線の接点に当てる
    • はんだが溶けてスーッと流れ込むのを確認
  2. はんだが富士山型になったら、はんだを先に離す

    • はんだごてはまだ当てたまま
    • はんだの量は、ランド全体を覆う程度(多すぎないように注意)
  3. 1〜2秒待ってから、はんだごてを素早く離す

    • ゆっくり離すと「ツノ」ができてしまう
    • スッと離すのがコツ

STEP 7:冷却と確認、余分な足を切る

はんだが固まるまで5〜10秒待ちます。

  • 固まる前に動かすと、「イモはんだ」になる
  • 固まったら、余分なリード線をニッパーで切る
  • 切るときは、はんだの付け根から1〜2mm上を切る

最後に、以下をチェック:

  • 富士山型になっているか
  • 表面がなめらかで光沢があるか
  • ランドとリード線の両方にしっかり付いているか

STEP 8 :導通チェック

  • はんだ付けが終わったら、必ず導通チェックを行いましょう。
  • 電源を入れる前にテスターの導通モードを使い、各ピンやランドが正しく接続されているか、ショート(短絡)がないかを確認します。
  • 測定時にブザー音が鳴れば正常、鳴らなければ断線の可能性があります。
  • 特に電源ラインやGNDなどの重要な回路を重点的にチェックし、問題がなければ初めて電源を投入します。
  • このひと手間で、回路のトラブルを未然に防ぐことができます。

失敗しないための10のコツ

実践的なコツをまとめました。

コツ詳細
1. はんだごてを十分に予熱する最低でも2〜3分は待つ
2. こて先を常にきれいに保つ作業の合間にこまめにクリーナーで拭く
3. こて先を寝かせて使う接触面積を広くして、効率よく加熱
4. ランドとリード線を十分に温める3〜4秒の加熱時間を守る
5. はんだは適量を使う多すぎても少なすぎてもダメ。ランドを覆う程度
6. はんだごてを素早く離すゆっくり離すとツノができる
7. 固まるまで動かさない5〜10秒は待つ
8. 風が当たらない場所で作業するエアコンや扇風機の風を避ける
9. フラックスを活用するはんだが弾かれるときは、フラックスを塗り直す
10. 失敗したら無理せず、やり直す失敗したはんだは、はんだ吸取線で除去してから再挑戦

はんだ付けに失敗したときの対処法

失敗は誰にでもあります。落ち着いて対処しましょう。

はんだの除去方法

手順詳細
1. はんだ吸取線を準備するはんだ吸取線(編組線)を適当な長さに切る
2. 失敗した部分に吸取線を置く吸取線を、除去したいはんだの上に置く
3. はんだごてで加熱する吸取線の上からはんだごてを当て、はんだが溶けて吸取線に吸収されるのを確認する
4. 吸取線を取り除くはんだが吸収されたら、吸取線とはんだごてを同時に離し、使った部分の吸取線は切り捨てる
5. 再度はんだ付けするランドとリード線をきれいにしてから、再度はんだ付けを行う

よくあるトラブルと対策

トラブル原因対策
はんだが弾かれるこて先の酸化、フラックス不足こて先をクリーニング、フラックスを塗る
はんだが流れない温度不足、加熱時間不足温度を上げる(350℃まで)、加熱時間を延ばす
ブリッジができるはんだの量が多すぎるはんだ吸取線で余分なはんだを除去
イモはんだになる加熱不足、固まる前に動いた加熱時間を延ばす、固まるまで待つ
こて先が真っ黒酸化による劣化こて先を交換する

はんだ付け作業の安全対策

はんだごては高温(300℃以上)になるため、安全対策は必須です。

安全のための注意事項

注意事項詳細
やけどに注意- はんだごてのこて先やはんだは非常に高温
- 作業中は絶対に素手で触らない
- 使用後も10分以上は触らない
換気を忘れずに- はんだを溶かすと煙(フラックスの蒸気)が出る
- 長時間の作業では、換気扇を回すか窓を開ける
火災防止- はんだごては必ずこて台に置く
- 可燃物の近くで作業しない
- 作業後は必ず電源を切る
目の保護- はんだが飛び散ることがある
- 安全メガネの着用も検討する
健康面はんだ煙を吸い込み続けると喉を痛めることがあるため、局所換気や小型ファンの使用もおすすめです。

初心者におすすめの練習方法

はんだ付けは、練習すればするほど上達します。

練習のステップ

練習方法詳細
1. ユニバーサル基板で練習- 安価なユニバーサル基板でランドとリード線のはんだ付けを繰り返す
- 抵抗やLEDなどの安い部品で練習
2. はんだ付けキットを使う- 初心者向け電子工作キットを購入して実践
- 完成品が動けば正しくはんだ付けできた証拠
3. 良い例と悪い例を比較- 自分のはんだ付けを写真に撮って後で見返す
- 失敗例をストックしておくと上達が早い

まとめ:はんだ付けはコツを掴めば誰でもできる

はんだ付けは、最初は難しく感じるかもしれませんが、正しい手順とコツを押さえれば、初心者でも必ずマスターできる技術です。

この記事の要点

  • 良いはんだ付けの特徴:富士山型、なめらかな表面、ランドとリード線への確実な付着
  • 最も重要なコツ:こて先を寝かせて、ランドとリード線を十分に温める
  • 失敗したら:はんだ吸取線で除去して、落ち着いてやり直す
  • 安全第一:やけど、換気、火災に注意

はんだ付けができるようになると、電子工作の幅が大きく広がります。最初は失敗しても、何度も練習して、ぜひマスターしてください。

あなたの電子工作ライフが、より楽しく充実したものになることを願っています。


参考動画

下記の動画は非常にわかりやすく、おすすめですのでご参考ください。

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