· FabLab Westharima Team · 3Dプリンタ  · 16 min read

【初心者向け】3Dプリンターの使い方 - 基本操作ガイド

3Dプリンター初心者向けに、基本的な使い方から印刷までの手順を詳しく解説。FDM方式プリンターの操作方法を学びましょう。

目次

「3Dプリンターを始めてみたいけど、何から準備すればいいの?」そんな悩みを抱えていませんか?

実は、3Dプリンターは思っているより簡単に始められます。

この記事では、2025年最新の情報をもとに、完全初心者向けに3Dプリンターの始め方を解説します。必要なもの、使い方の手順、よくある失敗と対処法まで、実体験を交えてご紹介します。

3Dプリンターとは?

3Dプリンターは、パソコンで作成した3Dデータをもとに、樹脂などの材料を積層して立体物を作る機械です。フィギュア、日用品の修理パーツ、オリジナルグッズなど、さまざまなものを作れます。

2025年現在、家庭用3Dプリンターは価格が下がり、性能も向上しています。初心者向けモデルなら2万円台から購入でき、技術が成熟した今こそ始めるのに最適なタイミングです。

主な種類

初心者が知っておくべき主な方式は2つです:

  • FDM方式(熱溶解積層方式):樹脂フィラメントを熱で溶かして積層。家庭用として最もポピュラーで、コスパに優れています。
  • 光造形方式(SLA/LCD):液体レジンを光で固める。精密なフィギュアや細部まで美しい造形に適しています。

初心者には、扱いやすく材料費も安いFDM方式がおすすめです。

2025年のトレンド

3Dプリント技術は急速に進化しています。

  • オートレベリング・AI機能の標準化:ベッド自動調整や失敗検知機能が一般化。初心者でも失敗が減少
  • マルチカラープリント:複数色を切り替えながら印刷できるプリンターが低価格化
  • 高速化:従来8時間かかっていた印刷が2~3時間で完了
  • 情報の充実:YouTube、Discord、Redditで日本語・英語の情報が豊富。困ったときすぐに解決策が見つかる

数年前と比べ、今は本当に恵まれた環境です。筆者も、数年前まで操作が多く苦手意識がありましたが、今は、することが激減したと感じています。

必要なもの

品物詳細参考価格
3Dプリンター本体初心者向けFDM方式なら組み立て済みモデルがおすすめ。2万円~10万円
パソコン一般的なノートPCで十分。高スペック不要。既存のPCでOK
CADソフト3Dデータ作成用。無料ソフトが充実(後述)。無料~有料
スライサーソフト3DデータをGコードに変換する必須ソフト。無料
フィラメント(材料)初心者には扱いやすいPLAがおすすめ。1kg 1,500円~3,000円
工具類ヘラ、やすり、ニッパーなど。2,000円~5,000円

2025年のおすすめ機種:初心者に人気のBambu Labシリーズ(A1 mini/P1S)については、別記事で詳しく比較レビューしています。「どの機種を買うべきか」迷っている方はこちらもご覧ください。 → Bambu Lab 3Dプリンター徹底比較レビュー:A1 mini vs P1S

最小構成で約3万円~、充実したセットで約6万円~から始められます。

3Dプリンターの使い方

実際に造形物を作るまでの流れを9つのステップで解説します。最初は試行錯誤が必要ですが、基本を押さえれば誰でもマスターできます。

STEP 1:3Dデータを用意する

A. サイトからダウンロード(初心者におすすめ)

まずは既存のデータで練習しましょう。以下のような無料サイトから、STL形式のデータをダウンロードできます。

B. CADソフトで自作(慣れてきたら挑戦)

オリジナルの造形物を作りたい場合は、CADソフトを使います。

  • Tinkercad(無料):ブラウザで動作。直感的で初心者向け
  • Fusion 360(個人利用無料):本格的な設計が可能。チュートリアルも豊富
  • Blender(無料):高機能だが学習曲線は急

Fusion 360の学習におすすめの本Autodesk Fusion マスターズガイド ベーシック編 改訂第3版 操作手順・コマンドの使い方・ブロックの動かし方・コツなどが手順を端折ることなく詳しく丁寧に記載されており、初心者でもわかりやすい内容です。

例:Fusion 360で3Dデータ作成

Fusion 360の操作画面イメージ

STEP 2:STL形式で出力

データをSTL形式に変換します。

  • ダウンロードした場合

    • ファイルの中からSTLファイルを探して使用
  • CADで自作した場合

    • 3Dデータをエクスポート機能でSTL形式で保存(Fusion 360なら「ファイル」→「エクスポート」→「STL」)

    Fusion 360でのSTL出力画面

STEP 3:スライサーソフトでGコード変換

ここが最も重要なステップです

  • スライサーソフトを使って、STLデータを3Dプリンターが理解できる Gコード(.gcode形式) に変換します。
  • スライサーソフトは、3Dモデルを何百層もの薄い層に「スライス」し、プリンターへの指示ファイルを作成します。
  • スライサー設定の良し悪しが、出力品質の80%を決めます

おすすめスライサーソフト

  • 初心者はまず、購入したプリンターのメーカー純正スライサーを使いましょう。

    • プリセットが最適化されているので設定不要
    • トラブルが少なく、サポートも受けやすい

    例:Bambu Studio(Bambu Lab)、Creality Print(Creality)、AnkerMake Studio(AnkerMake)など

  • 複数機種を使う場合や、より細かい設定をしたい場合:

    • UltiMaker Cura(無料):最も人気の汎用スライサー。日本語対応
    • PrusaSlicer(無料):高機能で細かい設定が可能

    スライサーソフトの画面イメージ

主な設定項目

初心者は最初、プリセット(初期設定)を使うのが無難です。慣れてきたら調整しましょう。

  • 積層ピッチ:1層の厚さ。0.2mm(標準)がおすすめ
  • インフィル密度:内部の充填率。15~20%で十分
  • プリント速度:50mm/s(標準)から始める
  • 温度:フィラメントの推奨値に従う(例:PLA:ノズル200℃/ベッド60℃)
  • サポート材:オーバーハングやブリッジなどの形状の場合に必要。「ツリーサポート」が取り外しやすい
サポートなしサポートあり
サポートなしサポートあり(茶色の部分):印刷後にニッパーで除去

備考:画像のモデルは「3DBenchy」。プリンター性能テスト用に設計されており、品質確認に最適です。

STEP 4:Gコードをプリンターに転送

GコードをUSBメモリ/SDカードに保存し、プリンターに挿入します。初心者にはこの方法が最も確実です。Wi-Fi接続やUSB直結も可能ですが、設定や安定性の面で初心者には不向きです。

STEP 5:フィラメントをセット

フィラメントホルダーに材料をセットし、ノズルまで通します。2025年の多くのプリンターには自動ロード機能があります。

  • ポイント
    • フィラメントは湿気に弱いため、使用後は密閉容器に乾燥剤と一緒に保管しましょう。
    • フィラメント乾燥機を使うのもおすすめです。

STEP 6:ベッドレベリング

プリントベッド(台)とノズルの距離を適切に調整します。これが初心者の最初の難関です。

  • 近すぎる:ノズルが詰まる、ベッドを傷つける
  • 遠すぎる:フィラメントが定着せず失敗

最近のプリンターにはオートレベリング機能があり、自動調整してくれます。手動の場合は紙1枚分の隙間を目安に。

STEP 7:プリント開始

準備完了。プリンターの画面から印刷を開始します。

印刷時間の目安:小物30分~2時間、中型3~8時間、大型10時間以上

最初の数層だけ確認し、問題なければ放置でOKです。ただし長時間印刷の場合、外出時は避けましょう。

3Dプリンターでの印刷中の様子

STEP 8:造形物を取り出す

印刷完了後、ベッドが冷えるまで待ちます(5~10分)。冷えると収縮し、剥がれやすくなります。ヘラやスクレーパーで慎重に取り外しましょう。

完成した造形物の取り出し

STEP 9:仕上げ

サポート材をニッパーで除去し、必要に応じてやすりで研磨します。

やすりセット

複数の粗さのやすりを揃えておくと便利

完成です! 2個目以降はスムーズに作れるようになります。

おすすめ初心者プロジェクト

「何を最初に作ればいいの?」と迷う方へ、おすすめの順番をご紹介します。

順番プロジェクト名理由データの探し方
1個目ケーブルホルダーサポート不要・30分で完成・実用的Thingiverseで「cable holder」検索
2個目スマホスタンドサポート練習・日常で使えるThingiverseで「phone stand」検索
3個目3DBenchy性能確認・設定の良し悪しがわかる3DBenchy公式

慣れてきたら:小物入れ、キーホルダー、フィギュア、修理パーツなどに挑戦しましょう。

ポイント:最初は小さくシンプルな形状から始めましょう。成功体験を積むことがモチベーション維持のカギです。

よくある失敗と対処法

失敗の種類症状主な対処法
最初の層が密着しないフィラメントがベッドに付かず、糸状になる・ベッドレベリング再調整(紙1枚分の隙間)
・ベッド温度を上げる(PLAなら60℃)
・ベッドをアルコールで清掃
印刷途中で剥がれる造形物がベッドから剥がれる・ベッド温度を上げる
・冷却ファンを弱める(最初の数層は0%)
・ブリム(土台)を追加
フィラメント切れ印刷途中でフィラメントが無くなる・印刷前に残量を確認
・スライサーで必要量をチェック
・長時間印刷前は新しいリールに交換
フィラメントの絡まり印刷途中でフィラメントが供給されなくなる・信頼できるメーカーのフィラメントを選ぶ
・入れ替え時、巻が崩れないよう慎重に扱う
・使用後は必ずリールの穴に通して固定
・リールが自由に回転できるか確認
・絡まった場合は一度巻き直す
糸引き造形物の間に蜘蛛の巣のような糸が出る・ノズル温度を5~10℃下げる
・スライサーでリトラクション(引き戻し)を有効化
積層のズレ層がずれたり段差ができる・プリンターのベルトを締める
・印刷速度を下げる(40mm/s程度に)
・安定した場所に設置
ノズル詰まりフィラメントが出てこない・フィラメントを乾燥させる
・ノズル温度を上げてクリーニング
・ノズルを交換(予備を用意)

実体験より:出力スタート後、何層目かまでは上記の問題が発生しないか観察し、問題が無ければ、以降は3Dプリンターにお任せ。

成功のカギ

  1. 良質なフィラメント:安すぎる材料は直径が不均一でトラブルの原因に
  2. スライサー設定:品質の80%はここで決まる
  3. 定期メンテナンス:ベルト、ノズル、ベッドレベリングを定期確認

注意点

  • 造形サイズ:プリンターの最大サイズを確認。大きすぎる場合は分割
  • 時間:小物でも数時間かかる。余裕を持って計画を
  • 著作権:キャラクター等のデータは著作権に注意
  • 安全性:武器や危険物の製造は違法
  • 熱・強度の限界:PLAは60℃以上で変形。耐熱性が必要ならABSやPETGを
  • 換気:ABSは臭いや微量の有害物質を出すため換気を

まとめ

3Dプリンターは、基本を押さえれば誰でもマスターできます。データ用意→STL変換→スライス→印刷→仕上げの9ステップで、オリジナル作品を作る楽しさを味わえます。

ポイント

  • 良質なフィラメントを使う
  • スライサー設定を丁寧に調整
  • 定期メンテナンスを怠らない
  • 失敗を恐れず試行錯誤を楽しむ

次のステップ

基本をマスターしたら、次に進みましょう。

ステップ分類具体的なアクション例
レベルアップ- CADスキルを磨いて自作モデリングに挑戦
- PLAに慣れたらABS、PETG、TPUなど他の材料も試す
コミュニティ参加- Thingiverse、Printablesで作品を公開
- YouTube、Xで他のユーザーの技術を学ぶ
実用活用- 日用品の修理パーツ作成
- フィギュア、ミニチュア、模型パーツ制作
- 試作品製作やオリジナルグッズ販売

3Dプリンターは「使ってみたい」から「使いこなす」へ、そして「創造する」へと可能性が広がります。ぜひ、この記事を参考に3Dプリンターライフをスタートしてください!

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